- ラオスに、なぜ不発弾
ラオスに、数多くの不発弾が地中に埋まっているということを、果たして日本人の何人が知っているだろうか。ベトナムにはベトナム戦争があったから、当然、不発弾があるのは分かるし、カンボジアでも1991年までの内戦で地雷が眠っているのは、皆、知っているだろう。しかし、なぜラオスに不発弾が。
ラオスには、ベトナム戦争当時、南ベトナムで戦う南ベトナム解放戦線(いわゆる「ベトコン」)へ、北ベトナムからの武器等物資の補給路としてホーチミンルート(トラック用道路)があったということは、よく知られているが、実はそのルートはベトナム国内にでなく、ベトナム国境沿いのラオスの山間部にあったのだ。このホーチミンルートを破壊するために、アメリカ軍は、激しい空爆を行った。また、ラオス愛国戦線(パテト・ラオ)の本拠地が、ベトナム国境近くの山間部にあり、これもアメリカ軍の爆撃の標的となった。さらに、北ベトナムへの空爆からタイにある空軍基地への帰りに、爆撃機の機体を軽くするためにも、ラオス上空で爆弾を投下したとも言われている。 - 一人1トンの爆弾
ラオスでは、その当時300万人ぐらいの人口だったが、アメリカ軍は300万トンもの爆弾を落としたと言われている。単純に計算しても一人1トンの爆弾が投下されたことになる。その投下された爆弾の約8割は爆発したが、残り約2割は爆発せず、地中に不発弾として埋まった。空爆が終わった後にも長期間にわたって、ラオス人の日常生活に支障を来す効果も狙って、投下された爆弾を全て爆発せず、恣意的に数多くの不発弾を投下したとも言われている。
- UXO Lao
ラオスで不発弾が数多く存在する地域は、東北部にあるシエンクワン県である。香川国際ボランティアセンターは、不発弾の処理を行っている組織がシエンクワンにあるということを知り、この組織の支援も行うようになった。シエンクワンの不発弾処理の組織は、「UXO Lao」という不発弾処理活動を行う政府組織のシエンクワン県支部である。1994年から英国をはじめ欧州各国の金銭的、人的支援を受けて処理活動を行ってきたが、2006年6月からは日本のNGO団体「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」が、支援を開始している。 - シエンクワン県の被害
「UXO Lao」シエンクワン県事務所のカンペット所長によると、同県では、これまでに不発弾で1,885人が死傷、うち824人が死亡した。最近でも毎年50人くらいが被害に遭い、うち約20人が亡くなり、子どもの被害が約4割を占める。職員170名が1,357k㎡の面積(香川県の面積の約2/3)を有する同県域の不発弾処理を行っているが、1年間に処理できる面積は僅かであり、これまで十数年間に処理できたのはたった21k㎡だけであり、この調子でいけば残り百年はかかるという。 - 不発弾の探査方法
不発弾の探査方法は、まず地表に碁盤目状に紐を張り、その1m四方の碁盤目状の枠の中を、丹念に金属探知器で調べていく。もし地中に不発弾などの金属類が埋まっていれば、甲高い発信音がして、その在処が分かる。手作業で注意深く土を掘っていき、不発弾か単なる金属類かを確認する。一般的に使っている金属探知器は、地中15~20cmくらしか探知できない。不発弾が発見されれば、発火用の火薬に導火線を結び、約300~400m離れた所から爆破装置のボタンを押して、爆破する。
- ボール爆弾
シエンクワン県での不発弾は、こぶし大のボール爆弾がほとんどである。この爆弾は爆撃機から約300個のボール爆弾が詰め込まれた3m位の大きな親爆弾が、空中で二つに割れ、その中からボール爆弾が飛び出し、地上近くまで落ちると、一個のボール爆弾の中に詰め込まれた約600粒の5mm大の金属玉が四方に炸裂し、人命を奪うこととなる。施設等を破壊するためのものでなく、明らかに人命殺傷用の恐ろしい非人道的な爆弾である。この爆弾は「クラスター爆弾」とも言われ、現在では世界中で使用禁止になっている。そんな爆弾が、1975年に戦争は終結したものの今現在も、ラオス人の人命を脅かしている。